施設検索/ホームメイト・リサーチ

ご希望の動物園情報を無料で検索できます。

ホームメイト動物園リサーチ

動物園情報

動物園の環境エンリッチメント/具体例②



動物たちの幸せな暮らしを目的にした「動物が持つ野生本来の行動の発現」は、実は、その野生動物がいた自然環境をそのまま再現しなくても引き出すことができます。国内の動物園が、様々な工夫で取り組み、現在、効果を上げている一例を紹介しましょう。

鉄塔の森という発想

鉄塔の森という発想

北海道札幌市にある「札幌市円山動物園」。この動物園は、北海道で最初にできた歴史ある動物園です。この動物園のチンパンジー舎には、10個体以上のチンパンジーの一群が暮らしていますが、そこにあるのは、"銀色"に輝く"森"です。そう、その森は、地上15mの鉄塔を中心にした鉄製の構築物なのです。チンパンジーたちは、構築物から地面に一直線に渡るロープを伝い降りてきたり、高さ15mの位置に張られたロープの上を、悠々と渡ったりしています。また、地上に降りた子どもたちは、草が生えて緑いっぱいの斜面をでんぐり返しをしながら遊び回っていたりもします。

こうしたチンパンジーの運動場に高さのある構築物をつくる動きは、1998年以降、日本の動物園の最近の傾向になっています。この札幌市円山動物園の他に、旭川市旭山動物園秋田市大森山動物園東京都多摩動物公園日本モンキーセンター名古屋市東山動物園神戸市立王子動物園北九州市到津の森公園などで、高さのあるタワーをつくるという手法が取り入れられています。札幌市円山動物園のような鉄製のものもあれば、神戸市立王子動物園のように丸太を組み合わせて巨大なピラミッドのようにつくったものもあります。それぞれの事情に合わせてオリジナリティあふれるタワーをつくり、チンパンジーたちは、そのどれもを喜んで使っています。

チンパンジーの高い能力を引き出し、生き生きとした環境を提供

チンパンジーの高い能力を引き出し、生き生きとした環境を提供

実は、この手法のきっかけは、愛知県犬山市にある京都大学霊長類研究所です。ここは、知る人ぞ知る、日本の「サル学」をリードしてきた研究所で、チンパンジーの「アイ」の研究をはじめ、ここから多くの研究成果が世界に公表されています。

この京都大学霊長類研究所が、1995年、チンパンジーを飼育している場所に、高さ8mの構築物をつくり、1998年には、それを増築する形で15mのタワーを建てたのです。この施設、以前は、当時の一般的な動物園同様、何の変哲もないコンクリートと鉄格子で囲まれた施設でした。しかし、様々な研究で次々とチンパンジーの高い能力と豊かな感情が明らかになり、また実際にアフリカに住む野生のチンパンジーを観察することで、その生態や行動を重視した環境づくりを模索するプロジェクトが始まったのです。その一環としてつくられたのが、野生では一日の半分以上を樹の上で暮らすチンパンジーと同じ、高い場所で暮らせるようにしたタワーであったわけです。

高さのあるタワーを利用して、上下左右に複雑な三次元の空間がつくられると、これまで高い場所を知らなかった飼育下でのチンパンジーたちが、好んで高い場所へ移動するようになりました。すると、札幌市円山動物園の例のように、今まで踏み固められて雑草さえ生えることのなかった地面に草が生え、植樹した木も根付くようになったのです。当初は心配されていた落下事故や脱走などもありませんでした。飼育下のチンパンジーたちは、野生と同様、高い空間で一日の大半を過ごすようになったわけです。

これは、高い空間で悠々と動くチンパンジーたちを見ることができるという、見せ方においても非常に効果の高いものです。この取り組みが、全国の動物園へと広がっていったのです。

チンパンジーの例は、ほんの一例です。今、全国の動物園では、様々な動物たちにとっての環境エンリッチメントの具体的な動きが続々と生まれています。

CXg