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「ピース」のストーリー/
愛媛県立とべ動物園



1999年、愛媛県立とべ動物園(以下、とべ動物園)で、2頭のホッキョクグマの赤ちゃんが生まれました。ホッキョクグマの国内での出生は、それまでに122頭ありましたが、そのうち半年以上育ったのはわずかに16頭のみ。とべ動物園で生まれた2頭も、そのうちの1頭は発見時にはすでに母親による咬傷を負い、2時間後に死亡。残る1頭も、母親が育児放棄したため、初の人工哺育による育児が始まったのです。国内初の人工哺育で成長したホッキョクグマのオス「ピース」の誕生物語を紹介しましょう。

「ミルクの種類も濃度もわからない」中での育児スタート

「ミルクの種類も濃度もわからない」中での育児スタート

人工哺育最初の壁は、「ミルクの種類も濃度がわからない」ことでした。海獣用のミルクを与えたものの、下痢になってしまったために使用を中止。そこで、犬用ミルクを低濃度で与えることから始め、徐々に濃度を高めていき、最終的に、何とかピースに合うミルクを与えることに成功しました。

次に、親代わりとなった飼育員さんの頭を悩ませたのは、ヒステリーでした。突然火がついたように泣き叫び、いつ止むともわからない状態だったそうです。その原因が最初はわからず心配したものの、ピースの様子をよく観察すると、暑さが問題であったり、排便に問題があったりしたことがわかり、その時々のストレスを取り除くことで治まったといいます。これは考えてみれば人間の赤ちゃんと同じですね。

しかし「暑さ」は、ホッキョクグマにとってやはり弱点のようで、生後30日目ごろから、それまでと同じ対処の仕方では効かず、最終的には10℃以下になる屋外での人工哺育となったそうです。

ピースの育ての親は?

ピースの育ての親は?

ところで、ピースの子育てはチームで行なわれていたのでしょうか?

その答えは、「いいえ」です。生まれたばかりのホッキョクグマの子どもは、眼も耳も閉じた状態にあるため、ホッキョクグマの子どもが外からの情報を得る唯一の方法は、嗅覚だと推測されています。一方、ホッキョクグマの野生下での出産、育児は、寒い北極の冬季に雪洞内で行なわれ、その期間は長い時には6ヵ月近くに及びます。その間、ホッキョクグマの子どもは母親や兄弟としか接しないわけです。つまり、そこにある「臭い」の種類はごく限られたもの。ピースをチームで育てることで、多くの臭いが交錯してしまうと、ピースは情報交錯によるストレスを発症すると考え、哺育担当者を1名に限定したのです。

では、夜間や担当者が休みの日はどうしていたのでしょうか? そう、育児に夜も休みもありません。担当者が自宅へ連れ帰り、育てていたのです。一度だけ、担当者の出張の3日間だけ、やむを得ず他の飼育員が哺育を担当したことがあったそうです。その間のピース、何と、ミルクの飲みが悪く、体重も減少したのだとか。担当の飼育員さんは、すっかりピースの母親になっていたわけです。

人工哺育成功の要因は、ビタミンと鉄分

人工哺育成功の要因は、ビタミンと鉄分

この他にもピースの人工哺育は、手探りの連続でした。海外の文献に、ホッキョクグマの死亡例としてビタミンB不足が挙げられていたものがあったため、20日ごろより、乳児用総合ビタミン剤の添加が開始されました。離乳が進んでからは錠剤のビタミン剤へと切り替え、それに加えて、生後3ヵ月までは、ひと月に1回、鉄剤の筋肉内注射が実施されたようです。これらの取り組みが、ピースの人工哺育が成功した要因のひとつではないかと考えられています。

順調に成長した陰に、子どもグマ「ピース」のさみしさが

順調に成長した陰に、子どもグマ「ピース」のさみしさが

その後、ピースは順調に成長。生後108日を過ぎると、体重も15kgを超え、車での移動や自宅での飼育が困難となってきたため、夜間もクマ舎で飼育することになりました。しかし、自分をクマだとは思っていなかったのでしょうか。最初のうちは、なかなかその環境に慣れず、ずっと鳴き続け、とうとう声が枯れて出なくなることもあったそうです。

1歳を過ぎたころも、担当者が帰った後、数時間は鳴いていたといいます。2歳過ぎまで母親と一緒に暮らすホッキョクグマですから、その気持ち、痛いほどわかりますね。

その後、日本の暑い夏を乗り切るために必要で、ホッキョクグマが本来の生態のひとつとして備えるべき水の中での泳ぎを3ヵ月かけて覚えたピース。鉛中毒、血便、脱毛など、様々な問題が次々と発生したものの、ピースは無事に成長し、今や、とべ動物園の一番のアイドルとして、来園者の心に、ピースに出会えた喜びを与え続けています。

ピースが飼育展示されている場所には、成長の過程がパネルで展示されています。とべ動物園を訪れ際には、ぜひ、そのパネルにも注目してみましょう。

CXg